国際シンポジウム「芸術と生──変化・修復・記憶」

2025-03-29

「撮影:岡はるか」
「Photo by Haruka Oka」

 
日時 2025年3月29日(土)14:00–17:30
場所 京都大学 人間・環境学研究棟 地下大講義室
主催 京都大学人間・環境学研究科田口かおり研究室、東京藝術大学未来創造継承センター
助成 JSPS科研費24K03506、23K00189
言語 日本語(一部イタリア語)
 
 

開催趣旨

人類の歴史において、芸術の「生」と「死」をめぐる問題は、つねに活発な議論の渦中におかれてきた。一体、どのような状況をもってすれば、絵画や建造物は「生きている」と言えるのだろうか。また、その「死」とは、一体何を意味するのだろうか。近現代絵画の複雑な組成に目を凝らすこと、建造物の復元や修理の射程をひもとくこと、失われた記憶を再構築し新たな造形を生みだすこと──本シンポジウムでは、これらの領域に携わる人々が一堂に会し、それぞれの視点を共有しながら、芸術作品の保存や延命の多様な可能性と意義について再考する。各々のいとなみは異なる前提をもつが、いずれもが芸術が持つ「記憶」と「未来」、そして「生と死」の意味を問う使命をたずさえている。登壇者には、国内外で活躍するアーティストの竹村京、歴史的建造物の保存を専門とする青柳憲昌、そしてアンゼルム・キーファーの仕事に精通する美術史家ガブリエレ・グエルチョを迎える。専門の異なる彼らが交差することで、変化と普遍、修復と保存、記憶と創造の境界に新たな光が当てられることだろう。

 
国際シンポジウム「芸術と生──変化・修復・記憶」

「撮影:岡はるか」
「Photo by Haruka Oka」

 
 

講演

芸術作品は死に打ち勝つのか?
Le opere d'arte vincono la morte?

Gabriele Guercio(美術史家・著述家)

アンゼルム・キーファー研究やキュレーションで国際的に活躍するガブリエル・グエルチョは、芸術作品がいかにして永遠性や不死を獲得できるのか、あるいはアーティストがそれに抗ってどのような営みをおこなっているのかを考察し、現代美術における「死への抵抗」について論じた。グエルチョは、芸術が伝統的に死を否定し、記憶を保存する役割を担ってきたことを指摘するが、現代美術の分野にはあえて崩壊や変化を作品に取り入れることで、新たな自律性や精神性を獲得しようとする作家たちがいると述べた。そして、現代美術が「消え去る運命(エントロピー)」を受け入れつつも、なおその先でいかに「不滅の価値」や「固有の生命」を保ち得るのかという、保存修復の根源にも通じる問いを投げかけた。

 
 

修復・何を直そうとしているのか?

竹村京(アーティスト)

アーティストの竹村は、壊れた作品や物体に光を当て修復するという手法を用いて展開する「修復シリーズ」作品を紹介し、「壊れたからといって終わったわけではない」と述べる。訪れた世界各地でそれぞれの「壊れ」を感じ取り、現地で拾ったものを素材として作品に組み込みながら、作品は自身より長く残り続けるものだという認識のもと、その「仮の状態」を作品として提示することに意義を見出していると語った。

 
 

「復元」による建築の転生:文化的記憶の再帰性・再現性

青柳憲昌(建築史家、立命館大学准教授)

過去のものを再解釈しながら再現していく行為こそが文化継承の本質であると述べる、建築史家の青柳は、伊勢神宮の式年遷宮を例に挙げ、建物は繰り返し建て替えられるが、過去を完全に復元することは不可能であり、復元には必ず解釈が介在するからこそ、その連続が文化をつくり続けると論じた。さらに修復の世界では再解釈はタブーに近いとされる場合もあると指摘しつつも、再解釈によってこそ作品や文化が継続していく可能性もあると語った。

 
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