Flux Forum 1|研究発表と対話の場

2026-08-24

 
日時 9月13日(日)13:00–17:30
場所 京都大学(吉田南キャンパス 吉田南総合館 東南棟101演習室)
主催 Flux(田口かおり、平諭一郎)
助成 JSPS科研費24K03506、23K00189
 
 

開催趣旨

Flux(フラックス)は、第1回となる研究発表と対話のためのフォーラムを開催いたします。
私たちの活動の出発点のひとつには、芸術実践、美学、美術史、保存修復、アーカイヴなどを学ぶ若手研究者やアーティストが、それぞれの所属や専門領域を越えて研究や実践を持ち寄り、自由に対話することのできる場をつくりたい、という構想がありました。本フォーラムは、その記念すべき第1回目となります。
Fluxという名のとおり、異なる領域を行き来しながら、知見や経験が交わり、そこから新たな問いやつながりが生まれる場となることを願っています。
参加を希望される方は、こちらよりお申し込みください。
参加申込みフォーム

 
 

演題と要旨

アルベルト・ブッリ《亀裂 Cretto》をめぐる試論——物質・イメージ・エイジング

松下栞(京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程2年)

戦後イタリアの芸術家アルベルト・ブッリ(Alberto Burri, 1915-1995)は、1970 年代 に《《亀裂》シリーズを制作した。ジンクホワイトを厚く塗り重ね、その乾燥過程で絵画 表面に表れるひび割れは、物理的な変化でありながら作品のイメージとしても機能し、 両者は分かち難く結びつく。本発表では、ブッリの制作経験と絵画のエイジングへの関 心という観点から《《亀裂》を再検討し、さらにはその表現が保存修復をめぐる議論に提起する問題について考察を行う。

 
 

原典なき歌——わらべ歌にみる、口承的保存と現代美術保存への視座

岡ともみ(東京藝術大学大学院美術研究科 博士後期課程2年)

現代美術の保存修復は、記録による原状の固定・再現性を前提とすることが多い。しかし記録を持たず口伝えのみで継承されてきた文化には、原典の同一性という前提が成り立たない。本発表は、わらべ歌「通りゃんせ」や「はないちもんめ」等を事例に、地域による歌詞・旋律の異版と、記録化を経て固定されていった過程を検討し、変容を内包した保存のあり方から、美術保存の「オリジナル」概念を問い直す視座を提示する。

 
 

ベッローリ的美術史記述におけるプッサンの位置づけ——『芸術化列伝』の記述と構造にかんする一考察

鈴木郁美(京都大学大学院人間・環境学研究科 博士後期課程1年)

本発表は、ジョヴァンニ・ピエトロ・ベッローリの『芸術家列伝』における記述方法と構造を、プッサン伝を手がかりに考察するものである。ベッローリは、画家の創意と技量を客観的に言語化する自らの役割を「翻訳者」と呼んだ。発表では、その記述方法に助言を与えたプッサンの伝記をもって閉じられる『列伝』の構造そのものに着目し、プッサンをベッローリ自らが構想する規範的な近代芸術家像の体現者として位置づけたことを明らかにする。

 
 

観察から関与へ——リサーチメソッドとしての歩行と不忍池をめぐる実践

野村穂貴(東京藝術大学大学院美術研究科 修士課程1年)

本発表は、歩行をリサーチメソッドとして捉え、歩くことで何が見え、どのような知や関係が生まれるのかを考察する。1949年、東京・上野の不忍池埋立反対運動で作られ、発表者が実寸大で復元した「アヒルの張子」を軸に、歴史をインスタレーションやレクチャーパフォーマンスとして再構成する過程を検討する。ルシウス・ブルクハルトの「散歩学」を手がかりに、観察にとどまらず場所へ関与する歩行が、歴史の継承をいかにひらくのかを問う。

 
 

描表装の世俗画における展開に関する考察 ——趣向的表現をめぐって

丸大聖(京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程2年)

描表装は古くは中世の仏画に用いられ、通常の表装形式に則りつつ、織文様を描くものが多いとされる。しかし、そうした裂地の代替としてではなく、本紙部分の図像と呼応した機智に富む描表装が近世後期に数多く制作された。本発表では、鈴木其一(1796-1858)ら江戸琳派や河鍋暁斎(1831-1889)ら幕末明治の作例を中心に、趣向的表現の展開について、浮世絵や際物などの同時代絵画表現との比較を通して検討する。

 
 

作品の負債性の外部化と美術教育——東京藝術大学の事例から

久保田荻須智広(東京藝術大学大学院美術研究科 博士後期課程2年)

本研究は、芸術作品が維持管理・判断・責任を要求し続ける「負債」として振る舞うことに着目し、その負債を誰が引き受けるのかを問う。本発表では東京藝術大学の美術教育を対象に、作品制作の指導だけでなく、制作されたその後の作品のアーカイヴについていかなる教育がなされているかを考察する。発表者自身の制作の省察をオートエスノグラフィーとして記述し、シラバス分析および教員へのインタビューを通して調査する。

 
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